トレーダーの憂鬱

相次ぐ証券所の不手際。と言ってもシステム構築(=人災)に起因するものがほとんどだが、先日の東証に引き続き、今日は名証でそれはおきた。
筆者もシステム構築に携わっている人間として、ミッションクリティカルなシステムの構築の難しさはよくわかる。24時間365日稼動し、かつ1日あたりのトランザクションが約750万件!(=取引ベース)といわれる東京証券取引所では、それこそ桁が違う。
近年、ネット上のEコマースが店舗での小売の窓口にとって変わるようになってからは、当然ながらシステムの信頼性が一番に問われる命題である。11/1の東証のシステムダウンによる全銘柄の取引停止は、まさにそのシステム増強の過渡期に起きたものである。メガバンク時代の幕開けの先陣をきった第一勧銀、富士銀行、日本興業銀行の合併によるみずほ銀行のバンキングシステム統合の際には、これもやはり勘定系基幹システムの主導権が一本化されておらず、異なるメインフレーム間でのシステムの移行という難題を抱えていた。その後も多くの銀行の合併が行われたが、今年の東京三菱とUFJの合併では、金融庁が"まった"をかけ、引き続きシステム統合の試験実施を促すよう指示され、メインの銀行業務についての正式な合併は年明けに延期となった。
東証のケースでは午前中で復旧したが、同じシステムを使用する福岡証券取引所・札幌証券取引所も取引を停止するなどその影響は大きく、海外投資家をもとより、日本市場に対する不信感を新たにさせた。そして本日の名証の場合は、相場報道配信システムの不具合(ハードの場合は障害)ということで基幹業務ではなかったが、やはり取引停止に追い込まれている。
これを受け、金融庁は全国6ヵ所の証券取引所に再発防止策の報告を求めているが、近い現場にいる人間として言わせてもらえばこればかりはどうなるものでもない。旧システムと新システムの切り替えは、リアルタイムでありリハーサルが利かない。実際と全く同じ負荷を想定して構築したとしても予期せぬ事態は起こりうる。東証での原因は月替わり時のバッチ(=一括)処理でのトラブルといわれているが、通常の3時までの営業に加え、時間外取引、そして月替わりには月次処理など一日に行う処理は数多く存在するため、難易度も相当なものだろう。
筆者個人としては、現場の大変さがわかるだけに心苦しいが、利用する側の立場として、これを反面教師として再発しないようにしてもらいたいと思う。

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