CSR

一昨年がコンプライアンスとするなら昨年はCSRの年だったと言えよう。
既にこの言葉については数多く取り上げられているが、CSR(CorporateSocialResponsibility)とは、企業の社会的責任という意味で、昨年以降、多くの企業がこのCSRを標榜し、自社HP等に謳ってきている。
これを最も実感したのは松下電器とクボタだろう。前者は昨年4月21日、国民生活センターを通し、石油ファンヒーターの最初のリコール広告を公開した。それから半年が過ぎ、一年で一番同製品が利用され始める秋から冬にかけて事態は急変した。
11月21日に長野県で起きた一酸化炭素中毒による死亡事故。
背面の排気筒から屋外に燃焼ガスを排出する独特の形状を持つ製品だが、その排気が室内に逆流し、屋内の酸素が一酸化炭素(CO)によって奪われ酸欠を引き起こした事故だった。もちろん、4月からリコールを呼びかけてはいたが、4月に温風機やファンヒーターを使う家庭などほとんどないに等しく、この日を境に松下の対応は混迷を極めていく。
11月30日に事故を報告、それから12/7、12/8、12/11、12/14、12/19、12/20、12/27で延べ8回。そして新年明けた1月4日にも回収の呼びかけを行っている状況で、昨年の事故発生以来、テレビ広告の差し替えをはじめ、全国紙、地方紙への広告、さらには5万円で買い取るとまでの措置をとったが、まだ全ては回収できていないようだ。
不運なことに、個人情報保護法施行後まもなく、銀行や大手企業などが情報の紛失や流出を相次いで起こしていたために、同社も関連する個人情報(製品の販売顧客データ)の廃棄を推進していた。対象の製品は既に発売から20年が経過しており、それが結果的に顧客の特定を困難にしてしまったのが、今回の事態を拡大させたもう一つの原因と言えよう。
そして、後者も昨年前半に起きたアスベスト(石綿)による中皮種の問題で大打撃を受けた。高度成長期を支えた建材として、今も多くアスベストは使われているが、こちらは国の規制が遅れたことが一番の原因と思われるものの、従業員や付近住民への賠償等、やはり責任は免れなかった。
既にPL(製造物責任)法をはじめ、消費者保護が謳われるようになって久しい。筆者も製品を作る立場の人間として言わせてもらうならば、不具合のない製品など絶対にありえない。(例えば子供が口に入れてしまうなどということを通常は想定しないだろう)であるならば、それが起こったとき、どう対応するかにかかってくる。広義のリスクとして企業も個人も気を引き締める必要があるのではないだろうか。

コメント