殺人マンション

連日、ワイドショーを賑わせている構造計算偽造事件。
しかしまさか筆者の地元が、事件の中枢に関わっているとは思いもしなかった。姉歯建築設計事務所では、渦中の姉歯一級建築士が、連日記者達の応対に終われる始末。皆様もお気づきだと思うが、彼は自宅兼事務所の前でインタビューに応じていた。あの市川の自宅。数億~十数億といわれるマンション建設の下請けにしてはみすぼらしい家だと思ったのは自分だけではないはず。それもそのはず、今回の事件の原因となった構造計算書の作成料は、1件数十万程度だそうだ。
ホテルやマンションの外観などの意匠設計に比べ、耐震強度の計算は地味な仕事である。そのためその分数をこなす必要があったのだろう。彼は氷山の一角だと語っていたが、おそらくその通りだと思われる。
責任の直接の原因が彼のモラルだとするならば、その次の原因はイーホームズである。国から認可された検査機関でありながら、偽造を見過ごした(もしくはノーチェック)ことについては責任は免れない。姉歯氏は当然のこと両者とも資格・認可取消、さらには刑事告発や集団訴訟を受けることになる。
既に分譲されたマンションに、都内2つのホテルを含む21棟のうち、何とか基準値をクリアしたのはたったの2棟しかない。しかも判明しているだけで全国22都府県194の物件が、姉歯氏が手がけたとされ、今日も3県4ホテルが営業休止に追い込まれた。先の21棟のうちの半数以上を手がけた施工主の木村建設(本社:熊本県)はすでに1回目の不渡りを出したため、民事再生法の適用の検討に入る事実上の倒産に追い込まれた。建築主のヒューザー、シノケンについては対応が分かれたものの、もはや風前の灯火、連鎖倒産も避けられない事態だ。
よく「家は人生最大の買い物」と言われるが、過去に高速道路の橋げたの手抜き工事による倒壊で被害者が出た際、公共工事の発注元として道路公団が訴えられた。今回は民間企業であり、個人的には国は介入すべきでないと考えるが、事は彼ら自身で解決できるレベルを超えており、やむを得ないだろう。
ヒューザーの小嶋社長が言っていた。「たとえ欠陥のあるマンションでも私の作品であり、子供のようなもの」だと。筆者もいろいろなシステムの構築に携わってきたが、対象は違えどこの言葉には全く同感である。であるならば、どんな子供が生まれてきたとしても親としての努めを果たすことが、売主として人間としての最低限の責任ではないだろうか...

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